男性泌尿器BLOG

2015.11.13更新

平成27年8月 東京港区で40代の弁護士が、大学院生の男に殴られ意識もうろうとしたところに枝切ばさみで下腹部を切り取られる事件がありました。

 

20代の妻の不倫相手に激怒した男が、相手の男根を切断し、切り取った性器はトイレに流したというのである。 

捜査員の懸命な捜索にもかかわらず流された性器は発見されなかったようだが、同じ男性として身の毛がよだつなんとも痛ましい事件です。

 

職業病なのか泌尿器科医の性(サガ)として、このような被害者(患者さん)が救急搬送された時にどうにかして救ってあげられないかとシミュレーションをしてしまいます。 

 

迅速な対応を行うには一人の医師では難しいので、複数の医師がチームを組める施設での対処が望ましいでしょう。

 

切り取られた性器が新鮮な状態で持ち込まれたのなら、組織内の血液を生理食塩水で洗い流し、組織が痛まない様に(壊死をおこさぬように)手術の準備が整うまで生理食塩水の氷で冷却し保護。 同時に患部の出血を圧迫または駆血(陰茎を縛る)で止血しつつ待機をする。 

 

再建手術は陰茎の血管、尿道、海綿体白膜、皮膚をそれぞれ縫合し修復するのだが、おそらくかなり時間はかかると思われるので全身麻酔で行う。 

 

とはいっても、幸いにそういう手術に遭遇した事がないので実際にどれくらい時間がかかるのかは想像がつかない。 

 

一方で、切り取られた局所が見つからない、もしくは損傷が激しく修復できない場合は、切断された部位の止血を行い、せめて排尿が可能となるように外尿道口(おしっこの出口)の造設をする。 

 

排尿が可能となっても、男性としての機能はどうなってしまうのかはやはり気になるところです。 

 

精巣(睾丸)に関して、左右のうちどちらか片方が残っていれば精子や男性ホルモンは生産されますが、男性機能(勃起機能)としてはかなりの支障が生じます。 

 

残った陰茎は勃起をしますが、残った部分が短ければ性交渉は困難です。 

 

精巣(睾丸)を両方失った場合には、男性ホルモンが作られなくなりますので、男性としての外見(筋肉量の維持、体毛、髭等)を維持するためには月に1-2回男性ホルモン注射の継続投与が必要となります。 

 

理由が何であれ、暴力での報復は決して許される行為ではありません。 ましてや法律家であれば法の下で決着をつけて欲しかったと思います。 命に別状が無かったとはいえ、被害者、加害者双方にとってとりかえしのつかない本当に気の毒な事件です。 

投稿者: 沖縄県のなしろハルンクリニック

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